21. 歩いて逃げる

 友達と一緒に現実逃避をした。やらなければまずいことをたくさん抱えている状態で、それらを完全に放置して、カラオケに行った。3時間たっぷり歌った。家で腐っているより、思い切って外に出てぱあっとやった方が良いのだ。はっはっは!とても楽しかった。

 帰り道、友達はめちゃくちゃ焦った顔をしていた。付き合わせてしまってごめんなさい。でも一緒に来てくれると言ったのもあなただから。そんなこと言っちゃいけないか。断りにくい気持ちもわかるし……。次はもっと丁寧に同意を得ます、合意を形成します。ごめんね。今日はありがとう。

 最寄駅に着く前に電車を降りて、ゆっくり歩いて帰った。歩いている間は現実逃避が正当化される気がする。移動しているから他のことができなくて仕方がないね、という感覚。乗り物での移動だと、他のこともできるよね?って気持ちがどこかにある。歩いているときだけちゃんと逃げられる。逃げないのが一番いい。